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2021.09.02

薬剤師の知識

薬局業界の現状や今後の動向について知ろう!

目次

薬学生の皆さん、こんにちは!なの花薬局人事部の湯田です。

皆さんは、薬局業界が変化しつつあることをご存知でしょうか?

今回は、薬局の現状と今後の動向について解説します。

薬局のほか、ドラッグストアなどの現状や今後の動向についてもご紹介していきます。
これから薬剤師を目指そうとしている方や薬局への就職を考えている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね!


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薬局業界の現状と抱える課題について

薬局の今後を考える前に、まずは現状と課題について知っておくことが大事です。
店舗数や業態、売上、慢性的な薬剤師不足などの問題を見ていきましょう。

薬局業界の現状

ここ10年間で約7,000件の薬局が増え、2021年時点で約60,000件まで店舗数が増えています。
特に最近では、ドラッグストアの店舗に調剤室が設けられる「調剤併設ドラッグストア」と呼ばれる形態も増えており、従来の医療機関の門前立地にとらわれない「面対応(面分業)」と呼ばれる店舗数も増えてきました。

また、在宅医療や健康サポートなど、地域の健康を守るためにさらなる役割が求められるようになり、薬局が対応するサービスの幅も広がってきています。

ちなみに、薬局業界の売上シェアは大手10社で約17%。
ドラッグストア業界が上位10社で約70%であることと比較すると、まだまだ細分化された業界であり、大手をはじめとした各社がシェア拡大の余地のある業界でもあります。

ちなみに、現在の大手薬局チェーン上位10社の一覧は以下の通りです。

左から順に、社名/処方箋応需店舗数/調剤報酬額
==============================

  1. 1 アインホールディングス/1,088店舗/2,638億円
  2. 2 日本調剤/649店舗/2,273億円
  3. 3 クラフト/1,002店舗/1,937億円
  4. 4 クオールホールディングス/778店舗/1,411億円
  5. 5 I&H/535店舗/1,182億円
  6. 6 総合メディカルホールディングス/722店舗/1,131億円
  7. 7 メディカルシステムネットワーク/415店舗/899億円
  8. 8 アイセイ薬局/‐/644億円
  9. 9 たんぽぽ薬局/133店舗/449億円
  10. 10 ファーマライズホールディングス/258店舗/398億円

==============================
※ドラッグマガジン 医薬品産業ランキング2020年ポケット版 より抜粋

これだけ聞くと「薬局業界はまだまだ成長するのでは?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実は薬局業界は既に頭打ちだと言われており、今後は残念ながら減少の一途を辿る見通しになっています。

その理由は、「高齢社会に伴い増え続ける医療費を国は何とかして抑えなければならない」という点にあります。
高齢者人口の増加や、医療技術の進歩により国の支出が増えて借金がどんどん膨れ上がっている中で、いかに抑制しつつ質の高い医療を継続できるかが、医療全体の根本にある課題となっているのです。

薬局業界が抱える課題


課題1)調剤報酬額が年々厳しく改定されている

薬局業界も「医療費を削減する」ことが求められており、言い換えると国が「薬局に対する報酬を減らす」ということでもあります。
現に2年に1回調剤報酬改定が行われていますが、調剤基本料や技術料などをはじめ、薬局に対する報酬は徐々に減らされており、苦しい経営状況になっている薬局も少なくありません。

そして、経営を続けることができず採算がとれない薬局を閉じたり、売却したりする薬局経営者もいます。

ただし、国が必要とする機能(かかりつけや在宅等)を発揮することができれば、安定した調剤報酬を算定することも可能です。
薬局が生き残っていくためにも、積極的にそのような変化をしていくことが求められています。


課題2)慢性的な薬剤師不足、薬剤師の偏在

薬局業界は、慢性的な薬剤師不足の状況に長年置かれています。
6年制薬学部の数が増えたこともあり、薬剤師の有資格者は年々増えてはいるのですが、薬局の店舗数の増加に対して数が追いついていないのが現状です。

大手薬局チェーンの成長による新卒大量採用、調剤併設ドラッグストアの台頭などもあり、大多数の中小の薬局は薬剤師の確保に苦戦しているところも少なくありません。

また、東京・大阪などの都市部には多数の薬学部・薬科大学があったり、勤務を希望する薬剤師が多かったりするため薬剤師の確保はある程度可能ですが、残念ながら郊外や地方、特に薬科大学の無い地域の薬剤師の確保は非常に困難でもあります。

薬剤師の人数が足りないと、目の前の処方箋に対応するのに精一杯になってしまうため、在宅医療や地域活動に対する時間が割けないことにもつながってしまいます。

2020年から続く新型コロナウイルスの影響により受診控え・処方箋枚数が減っている状況で、大手薬局をはじめ薬剤師の採用意欲がやや下落している状況ではありますが、まだまだ薬剤師の売り手市場が続くことは想定され、薬剤師の確保は薬局経営において難しい課題となっています。


課題3)薬局の後継者不足

前述の課題ともつながる問題ではありますが、現在の薬局は医薬分業によりここ30年の間に開設された店舗が多く、薬局の経営者が60代以上となるなど高齢化が大きな問題となっています。
もちろん次の経営者を確保・育成できているところもありますが、個人で経営している場合はご子息が薬局を継がなかったり、経営を引き継ぐ方がいなかったりするため、会社を売る・薬局を閉めるなどの決断を迫られている経営者も多くいます。

「いずれは独立して自分の薬局を持ちたい」と考える薬剤師にとっては決して悪くない環境ではありますが、調剤報酬の厳しい改定などで薬局を取り巻く環境が良いとも言えません。
そのため、採算の見通しがつく店舗であれば他のチェーン薬局に売却したり、採算の取れない店舗を閉局したり、会社ごと大手に売却する方法を取ったりすることも多々起こっています。


課題4)薬剤師のあり方の変化

昔は調剤をはじめとした対物業務がメインだった薬局薬剤師の業務も、ここ10数年の動きの中で、在宅医療、後発医薬品の調剤、他職種連携や服薬後のフォローに至るまで、業務内容が多岐に渡っています。
そして、今後も薬局薬剤師はより多様な業務が求められることと思います。
しかし、ただ闇雲に広がるだけではなく、薬剤師がやらない業務も一方で増えていくでしょう。

その発端となったのが、厚生労働省が2019年の4月2日に出した"0402通知"と呼ばれる「調剤業務のあり方について」です。
これは今まで薬剤師しか行えなかった調剤業務の一部を、薬剤師の指示に基づき、薬剤師の目の届く場所であれば、機械的な作業に限り薬剤師以外の者が医薬品を取り揃えたり、監査前の薬剤の数量確認を行なったりして良い、とされるもの。
つまり、薬局で働く事務スタッフなどの職員がいわゆる「対物業務」の一部を担うことで、薬剤師が「対人業務」にシフトすることを後押ししています。

かかりつけをはじめとした国が求める変化に対応できるかどうか、それぞれの薬局は変化しなければ生き残れない環境になっており、変化できない薬局や薬剤師は時代に取り残され淘汰されてしまうことになりそうです。

薬局業界の今後はどうなる?

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厚生労働省が2025年までに目指す薬局業界像

まず、厚生労働省が2015年10月に公表した「患者のための薬局ビジョン」というものがあります。
これは、厚生労働省が描く薬局の将来像を描いたもので、具体的にどのような取り組みを求められているかが一目でわかるものです。

その中の重点施策として、2025年までに門前薬局を含め全ての薬局を「かかりつけ薬局」にすると書かれています。
かかりつけ薬局では、①ICTを活用した服薬状況の一元的・継続的把握、②24時間対応・在宅対応、③医療機関をはじめとする関係機関との連携を担うことが求められていますが、いずれも患者さま目線で最も効果的な薬物療法を実現するための取り組みとなっています。

※詳しくは「かかりつけ薬剤師になるための要件や条件をチェック!メリットもご紹介」をご参照ください。

2025年は団塊の世代の多くが75歳に突入し、医療制度への負担が大きくなる節目の年でもあります。
来るべき日のために「かかりつけ薬局」や「かかりつけ薬剤師」が機能し、患者さまにとって必要な医療が受けられる体制を厚生労働省は目指しているのです。

今後に大きく関わる「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」

2019年11月に成立した「医薬品医療機器等法(薬機法)」の改正により、2021年8月から「地域連携薬局」と「専門医療機関連携薬局」の2つの認定が新たにスタートすることになりました。
特定の機能を持つ薬局が都道府県知事の認定により名乗ることができるようになり、薬局ごとの特徴がより明確になるため、患者さま自身が自発的に薬局を選び、より求めている医療を受けられるのではと期待されています。

「地域連携薬局」とは、入退院や在宅医療などを地域の医療提供施設と連携しながら対応できる薬局のことで、地域の患者さまが安心して薬物治療を受けられるよう、患者さまをサポートする役割を担います。

「専門医療機関連携薬局」とは、専門的な薬学管理が必要な患者さまに対し、他の医療機関と連携しながら、より高度な薬学管理や調剤に対応できる薬局のことです。
現在は「がん」のみが対象となっておりますが、今後追加されることとなっており、認定にはいくつかの要件を満たす必要があります。

詳しく知りたい方は厚生労働省のホームページをご参照ください!

今後薬局の数が減っていく状況において、2つの薬局に該当しない薬局から淘汰されていくと予想されるため、1日でも早く要件を満たして機能を果たすことが求められるでしょう。

薬局の未来予想図

特に、これから就職する方にとっては薬剤師人生が40年以上ありますので、今後の業界動向はぜひ抑えておきたいところですよね。

薬局業界は今後どのように変化していくのでしょうか?


1) 薬局の数は確実に減っていく

薬局は現在全国に約60,000店舗あることは前述の通りですが、実はアメリカの薬局数よりも多い数となっています。
そして、現在の薬局数を国は多くなりすぎたと捉えており、適正な数に抑制しようと動いています。
また、将来的に現在の約半数の30,000店舗になるのでは...とも予想されています。

すでに調剤報酬は徐々に厳しく改定され、求められる機能を発揮できる薬局が自然に残るような状況が作り出されているため、恐らく「かかりつけ」の機能を備えた「地域連携薬局」もしくは「専門医療機関連携薬局」として認められることが、生き残りの最低条件になる可能性が高いでしょう。


2) 在宅医療がより重要な役割に

毎年増加する高齢者に対し、現在の病院だけではどうしても病床数が足りず、受け皿として支えきれない状況にあります。
高齢者に対して必要な医療を提供するためにも、国は病院から在宅医療への移行を進めており、薬剤師にも在宅医療を支える役割が強く期待されています。
個人宅や施設に薬を届けて適切に管理するとともに、アドヒアランスを向上させるための取り組みが今後の薬局にとって重要な業務であることは間違いありません。


3) オンライン服薬指導がもっと身近に

オンライン服薬指導も重要なテーマの一つです。
従来は、離島や僻地など医療アクセスの悪い場所をはじめとした特区のみに限定されていましたが、薬機法の改正とともに2020年9月に一定の要件のもとで全面解禁されました。

また、2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、4月10日に厚生労働省から「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」という事務連絡が出されました。

これはいわゆる"0410対応"とも呼ばれ、医療機関や薬局での感染拡大を防ぎ患者さまを守るため、時限的な措置ではありますが、電話や情報通信機器を用いた診察を受けていない患者さまであっても、医師にオンラインでの服薬指導を希望する旨を伝えれば、どの薬局でも対応して良いことになっています。

実施例はまだ多いとは言えませんが、医療機関側・薬局側の双方の体制が整ったり、オンラインで服薬指導が受けられることに対する国民の認知がもっと進んだりすれば、IT機器の扱いに長けている若い世代を中心に今後広まる可能性が高いと思われます。


4) 大手薬局チェーンによる寡占化(シェア拡大)が進む

調剤報酬が段階的に下げられている中で、今まで通りの報酬を維持しようと努めたとしても、求められている基準の高さから、どうしても収益が減ってしまう薬局が大多数だと見通されています。
その一方で大手薬局チェーンは企業経営をより効率的に行い、減収分をカバーできる体制を備えていることが多く、この環境下では有利だと言われています。

具体的に有利な点について、例えば以下のようなものが挙げられます。

  • 一定のバイイングパワーがあり、医薬品の仕入れ価格の交渉ができること
  • 医薬品の流通を適正化でき、在庫やデッドストックのリスクを抑えられること
  • 知名度やブランド力があり、人材採用を比較的少ないコストで実施できること
  • 会社の運転資金を十分に確保しており、企業体力があること
  • 多事業展開により調剤報酬に頼りすぎなかったり、減収をカバーできたりすること
  • 調剤機器やシステム面などへの大きな投資が可能なこと

そして、今後数十年かけて新規出店やM&Aなどを経ながら徐々にシェアを広げるとともに、大手薬局同士の経営統合なども予想でき、現在のドラッグストアのように上位10社で70%以上を占めるような寡占状態に近づくのではないかと想定されています。


5) ドラッグストアの調剤併設が当たり前の時代に

ここ数年で一気に増えてきた調剤併設ドラッグストア。
調剤報酬額ランキングでは、大手の薬局チェーンと肩を並べるほどの規模を持つドラッグストアも出てきています。

ドラッグストアに併設することにより、医療機関の休診日によらず処方箋を受け付けたり、店舗の営業時間に合わせて夜遅くまで受付を行ったりといった利便性の良さがあります。
また、薬が出来上がるまでの待ち時間を、医薬品や日用品、化粧品、食品などの店内の買い物に使えるというメリットも。

今後は患者さま一人一人が求めている医療サービスに合わせて、かかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師を選ぶ時代です。
もちろんその中に調剤併設ドラッグストアという選択肢も入ってきます。
これから薬局の数が減るとはいえ、処方箋獲得のための競争はより激化していくものと思われます。


薬局以外の現状〜今後の動向もご紹介

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薬局以外の動向として押さえておきたいのが「病院」と「ドラッグストア」です。

どちらも薬剤師の資格を活かした活躍ができる一方で、それぞれが抱えている課題もありますので、ぜひ薬局業界と比較してみてくださいね。

病院は赤字経営からの脱却がカギ

病院業界は医療の最前線で患者さまと向き合う、非常に価値の高い役割を担っており、チーム医療の中で薬剤師が患者さまのために輝ける場所の一つでもあります。
しかし、残念ながら経営状況の良い病院は非常に少なく、赤字となっている病院の割合は全国の病院の7割とも8割とも言われています。
そして、国や自治体からの補助金により、何とか生き永らえている病院も少なくありません。

目の前の患者さまの傷病を回復させつつ、いかに収益を上げるかという視点が必要となり、例えば病院のベッドの回転率を上げることによって、限られた資源の中で高い報酬が得られるような動きが求められます。
そこで働く薬剤師も同様に、患者さまにとって必要な調剤や服薬指導、服薬管理を迅速に行うことが求められるでしょう。

病院業界においても薬局業界と同じく、地道な経営努力をしつつも地域包括ケアシステムの中で存在感を発揮できる病院が残っていくものと思われます。

ドラッグストアの競合はコンビニやスーパーマーケット

7兆円以上のマーケットを持つドラッグストア業界。
薬局業界と近い規模を持ちながらも、大きな違いは上位10社で70%以上のシェアを持っている寡占市場だということです。
直近でも大手同士の経営統合が控えており、その占有率はより高まっています。
言い換えると、すでに成熟し飽和している業界でもあり、新たな顧客をどこから呼び込むかが今後の成長において重要でもあります。

もちろん、調剤併設を進める方法を取ることで、以前は薬局に通っていた患者さまがドラッグストアにも足を運ぶようになりました。
ただ、それだけではなく食料品や飲料、酒などを揃えることによりスーパーマーケットで買い物をする顧客をターゲットにしたり、都市部では弁当・パン・雑誌などを販売してコンビニエンスストアの顧客にも来店して貰えるよう新しい取り組みを行ったりしています。

ドラッグストアは元々、独自のポイント制度やアプリの開発などにより、顧客の囲い込みが非常に上手な会社が多いです。
そのノウハウを活かし市場規模を拡大できるのか、もしくはコンビニなどもOTC医薬品の販売に積極的に動くなど、逆に利便性を発揮されて市場規模を奪われる形になるのか、今後も激しい競争が行われる見通しです。


薬局業界の今後を想定してキャリアプランを

長文にも関わらず最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。

できるだけ要点のみに絞ってご説明したつもりですが、ブログで書き尽くせないほどの深いテーマでもありますので、やや難しい点もあったかもしれません。

薬局業界が変化に富んだ業界であると同時に、薬剤師自身もその変化にしっかり対応しつつ生き残っていかなければならないことが伝わっていましたら嬉しいです。

今後は、薬局の数は確実に減っていく、在宅医療がより重要な役割になる、オンライン服薬指導がもっと身近になる、大手薬局チェーンによる寡占化が進む、ドラッグストアの調剤併設が当たり前の時代になるなど、さまざまな想定がされています。

続きはぜひご自身で調べたり、話を聞いたりしながら知識を深めて欲しいです。

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