2025.12.01
薬剤師の知識
薬剤師になるための実習期間はどれくらい?内容や場所も詳しく解説!
目次
薬学生の皆さん、こんにちは!なの花薬局の橋本です。
みなさんは、薬学部の実務実習の目的を知っていますか?
昨今の医療技術の高度化は目まぐるしく、医薬分業の進展に伴う医薬品の安全使用をはじめ、薬剤師に求められる資質・能力・スキルは年々高いレベルを求められるようになりました。
そのような社会に応えていくためには、医療の最前線に立てる"質の高い薬剤師"を養成する必要があります。
そのための教育の一つが現在の「4期制実務実習」なんです。
今回は、薬学生の「実務実習」に焦点を当てて解説していきたいと思います!

薬剤師になるための実習期間はどれくらい?
薬学部が4年制から6年制に変わると同時に、全国の薬学部の実務実習は3期制に変更され、そして2019年には4期制に変更されました。
2027年度の薬学部5年生の実務実習スケジュールは下記の通りです。
人によっては4年次の2月から実務実習が始まります。
<2027(令和9)年度実務実習 実施日程>
- Ⅰ期:2027年2月15日(月)~5月2日(日)
- Ⅱ期:2027年5月17日(月)~8月1日(日)
- Ⅲ期:2027年8月16日(月)~10月31日(日)
- Ⅳ期:2027年11月15日(月)~2028年2月6日(日)
ちなみに、誰もが無条件に実務実習に行けるわけではありません。
実務実習に行く前にも複数の関門を乗り越える必要があります。
まず、薬学部4年次の終わりに、実務に適した能力が養われているかを「CBT」と「OSCE」という薬学共用試験で確認されます。
薬剤師資格を持たない薬学生が実務実習を行うにあたり、学生の知識・技能・態度が一定のレベルに到達していることを保証するための試験です。
薬学共用試験は、主に知識を評価する客観試験CBT(Computer-Based Testing)と、実技を通して主に技能・態度を評価する客観的臨床能力試験OSCE(Objective Structured Clinical Examination)の2種類からなり、全国の大学で統一の内容で実施されます。
上記の試験に合格し、校内で5週間以上の事前実習・事前学習を経て、いよいよ実習に出ることが許されます。
CBTの対策については、下記コラムでご紹介していますのであわせてご覧ください。
薬学部の共用試験 CBT対策や勉強方法は?出題範囲や合格率も確認!
実習期間は「薬局実習(11週)」と「病院実習(11週)」で、薬局と病院での実習を合わせて5カ月間行われます。
実務実習では、薬学教育モデル・コアカリキュラムに基づき以下の内容を体系的に学びます。
- 調剤、製剤、服薬指導など薬剤師職務に必要な基本的知識・技能・態度
- 医療現場での薬剤師の使命・倫理観・職能意識
- チーム医療の一員としての役割(他職種との連携や責任)
- 医薬品管理・供給・安全対策・リスクマネージメント実践
- 処方箋の鑑査や疑義照会における法的根拠と実際の対応力
- 服薬指導のための患者情報の収集・共有、適切なコミュニケーション能力
- 地域医療・在宅医療・保健活動への参画、薬局・病院での役割理解
- 医療安全や副作用への対応、患者のQOL向上を目指した態度・技能
座学や学内の事前実習で養った力を、病院・薬局など臨床現場での体験学習を通じて発展させるのが実習です。
なお、薬学生は実習期間を2期連続にする必要があります。
Ⅰ期に薬局実習を行う場合は、Ⅱ期に病院実習というように、続けて実習期間を設けなければいけません。
旧4年制薬学部の実務実習期間より長期になったため、よりたくさんの経験を積み、知識を身に着けるチャンスがたくさんあるのが現在の実務実習です。
薬学生の実習期間が長期化!以前の実習との違いは?
そもそも薬学部が6年制に延長されたのはなぜでしょうか?
それは薬剤師の教育の場である薬学部を6年制にすることで、先進国の中で遅れているといわれている薬剤師の教育を充実させて医療の質の向上を図ってほしいという厚生労働省の要望に応えるためです。
それを受けて文部科学省は、より優れた薬剤師を養成するために2006年度から薬剤師国家試験受験資格を6年制の薬学部卒業者のみに与えることにしました。
この流れを踏まえ、薬学教育の土台となる「薬学教育モデル・コア・カリキュラム」は2022年度に改訂されています。
この改訂では、薬剤師として生涯にわたり身につけるべき資質・能力を明確化した点が大きな特徴。
また、共通部分を約7割にとどめて大学ごとの特色あるカリキュラム編成を促したことや、大学と医療現場が連携し早い段階から臨床薬学教育を行う体制を整えたことも重要なポイントです。
こうした背景をもとに、実習期間も旧4年制薬学部に比べて長期化し、より臨床に関わる実践的な能力を培うようになったのです。
旧4年制薬学部の実習期間は1~4週間と現在の実習期間と比べて非常に短く、そして大学によって期間もバラバラでした。
しかも、内容は見学型で実習内容も実習先の薬局や病院によってバラつきがありました。
その頃と比べて、現在の実務実習のカリキュラムでは、薬局・病院ともに11週(20単位以上は実務実習で取得)と長期化しています。
また、これまで、実務実習の内容は「事前学習」「病院実習」「薬局実習」の3領域に分かれていたにも関わらず、内容が重複する部分が多くありました。
しかし、2019年度から薬局・病院に共通している業務の評価が統一され、どちらかの実習で修得すれば、再度同じ項目を学ぶ必要がなくなったのです。
統一された項目は以下の通りです。

実習内容の重複をなくすことで、より多くの時間を「患者さまと関わる体験」に割けるように設計が見直されています。
節約した時間を病棟業務やチーム医療、在宅医療などに充て、「患者さまと関わる体験」を重視した実習を進めることが現在の実務実習の狙いです。
特に「がん、高血圧症、糖尿病、心疾患、脳血管障害、精神神経疾患、免疫・アレルギー疾患・感染症」の8疾患は、「患者さまと関わる体験」が重視されています。
関連する検査値や治療薬をしっかり勉強しておくと安心です。
薬学生の実務実習場所や内容、指導員は?
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実習場所や実習内容についても詳しく見ていきましょう。
薬学生の実務実習場所はどこ?
実務実習の実施場所となる薬局や病院は、各地域の調整機構が受入先を調整するものと、大学独自で実習受入先を決める2つのパターンがあります。
なお、大学独自で実習場所を選定する場合は、学生の希望を聞いてくれる場合もあります。
実務実習を行う薬局、および病院は下記の「研修生受入施設基準」をクリアしています。
研修生受入施設基準
研修生受入施設基準は、薬局と病院で異なります。
【薬局】
- 関係法令を遵守し、適切に業務を実施していること
- 受入薬局は、「薬学実務実習に関するガイドライン」に基づく実習環境が整備されていること
- 複数の薬剤師が勤務する場合、当該薬局の認定実務実習指導薬剤師を中心として、勤務する全ての薬剤師が協力して実習を行う体制を確保していること
- 開設者が実習全体の責任を持ち、認定指導薬剤師と連携を取り、適切な実習を行う体制を確保していること
また、薬局には以下の通り受入要件も定められています。
- 実習ガイドラインが求める地域保健、医療、福祉等に関する業務を積極的に行っていること。なお「健康サポート薬局」の基準と同等の体制を有していることが望ましい
- 「代表的な疾患※1」に関する症例を実習できる体制を整備していること
- 認定指導薬剤師が常勤していること
- 薬剤師賠償責任保険に加入していること
※1 がん、高血圧症、糖尿病、心疾患、脳血管障害、精神神経疾患、免疫・アレルギー疾患、感染症(「薬学教育モデル・コアカリキュラム 平成25年度改訂版」F薬学臨床 より)
※参照:一般社団法人薬学教育協議会「6年制薬局実習の受入薬局に対する基本的な考え方」
【病院/一施設のみで行う場合】
- 病床数は問わないが、実習生が代表的な疾患(がん、高血圧症、糖尿病、心疾患、脳血管障害、精神神経疾患、免疫・アレルギー疾患、感染症)患者に継続的に関われる病棟を有すること
- 病棟における実習の重要性に鑑み、薬剤管理指導業務を実施し、院外処方せんの発行を推進していること。病棟薬剤業務実施加算を届けていることが望ましい
- 認定実務実習指導薬剤師が1名以上配置されていること
- 原則として、認定実務実習指導薬剤師の指導を補完するに相応しい指導薬剤師(日本病院薬剤師会認定指導薬剤師など)が複数配置されていること
- 日本病院薬剤師会賠償責任保険(施設契約)またはこれと同等の賠償責任保険に加入していること
※参照:一般社団法人薬学教育協議会「病院における長期実務実習に対する基本的な考え方」
【病院/グループ施設で行う場合】
- 責任施設(基幹となる病院)を中心に地域でグループを組み、グループ全体で、実習生が代表的な疾患(がん、高血圧症、糖尿病、心疾患、脳血管障害、精神神経疾患、免疫・アレルギー疾患、感染症)患者に継続的に関われる病棟を有すること
- 責任施設は、薬剤管理指導業務を実施し、院外処方せんの発行を推進していること。責任施設は、病棟薬剤業務実施加算を届けていることが望ましい
- 認定実務実習指導薬剤師が、責任施設に1名以上配置されていること
- 認定実務実習指導薬剤師の指導を補完するに相応しい指導薬剤師(日本病院薬剤師会認定指導薬剤師など)が、各グループ施設に配置されていること
- 各施設において、日本病院薬剤師会賠償責任保険(施設契約)またはこれと同等の賠償責任保険に加入していること
※参照:一般社団法人薬学教育協議会「病院における長期実務実習に対する基本的な考え方」
薬学生の実務実習内容とは?
実務実習は、文科省が定めた「実務実習モデル・コアカリキュラム」に沿って行われます。
詳しい内容としては、処方せんの記載に従って正しく医療品の取扱いを行うこと、錠剤・カプセルなどの計数調剤を行うこと、異なる商品名で同一有効成分を含む薬品を列挙することなどがあります。
近年は、在宅訪問への同行など、実習で在宅医療・地域医療に関わる機会も重要視されています。
実際に現場の薬剤師が行なっていることを、指導員の指示に従いながら実践して学んでいきます。
なお、なの花薬局は薬剤師による在宅訪問に力を入れてきた実績があり、実習を通して在宅医療に興味を持った方は、若手のうちから挑戦できる環境が整っています。
これらは薬学部の必修カリキュラムとして決定されていることなので、すべての大学で必ず同様の実習を行います。
「学生はどこまでの行為を実習で行えるのか」が気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、基本的に参加型実習ですので、薬学生が行う実務実習の実施上の条件を満たせば、指導員の監督の下で、学生はほぼすべての業務を行うことができます。
しかし、例外ももちろんあり、「疑義の確定」と「麻薬の取り扱い」に関しては見学のみにとどめられています。
薬学生の実務実習指導員の要件
指導員は「認定実務実習指導薬剤師」が担当します。
「認定実務実習指導薬剤師」は実務経験5年以上および勤務継続3年以上、認定実務実習指導薬剤師養成研修を修了した薬剤師が取得できる認定資格です。
養成研修では薬剤師としての心構えや心理学、コミュニケーション術、実際の育成に関する技能についてなど幅広く学びます。
研修を経て、実習生を指導・監督を行うに必要な資質を有している薬剤師が指導に当たります。
病院・薬局指導薬剤師基準
指導薬剤師の基準を満たし実習の指導を行うのは、以下のような素質を有し、要件を満たす薬剤師です。
【認定実務実習指導薬剤師となるための基本的素養等】
- 十分な実務経験を有し薬剤師としての本来の業務を日常的に行なっていること
- 薬剤師を志す学生に対する実習指導に情熱を持っていること
- 常日頃から職能の向上に努めていること
- 実習の成果について適正な評価ができること
- 認定取得後も継続的かつ日常的に薬剤師実務に従事する見込みがあること
- 実務実習生の受入期間中、恒常的に指導することができること
【認定要件】
次の認定実務実習指導薬剤師養成研修をすべて修了した薬剤師が認定実務実習指導薬剤師として学生の指導にあたります。
1.講習会形式の研修の修了
2.ワークショップ形式の研修の修了
講習会形式の研修の受講証、ワークショップ形式の研修の修了証には有効期限があり、どちらも研修受講日、または研修修了日から6年間となります。
薬学生の実務実習で気をつけること
実務実習は、大学で学んだ知識を実際の医療現場で活かす大切なステップです。
薬局・病院ともに患者さまと接する機会が多いため、事前準備やマナーがとても重要になります。
事前に準備しておきたい持ち物
実習では想像以上に必要なものが多く、「もっと早く準備しておけば良かった」と感じることも少なくありません。
最低限そろえておきたいものと、あると便利なものを事前に整理しておきましょう。
【必須の持ち物例】
- 白衣(清潔でしわのないもの)
- 名札
- 筆記用具(複数色が使えるペンが便利)
- ポケットサイズのメモ帳
- ファイル(資料整理用)
【あると役立つアイテム】
- 小型の電卓(投薬量や計算で使用する場面あり)
- ポケット用ペンケース(白衣汚れ防止に)
- よく使う医薬品情報の書籍やアプリ
実習期間中は毎日実習日誌を書くため、筆記用具は必須です。
実習日誌の書き方については、「薬学部生必見!実習日誌の書き方をご紹介!効率良く書き進めるコツも」をご覧ください。
服装と身だしなみ
実習中は「学生だから許される身だしなみ」では通用しません。
患者さまからは医療スタッフの一員として見られるため、清潔感と信頼感のある服装が基本です。
服装・身だしなみのポイントは次のとおりです。
- 白衣は清潔・無臭・しわなしが鉄則(最低2着あると安心)
- 靴は白を基調とした歩きやすいもの
- 過度な装飾や強い香りは控える
- 髪・爪は常に清潔に整えること
初日はスーツ着用を求められる場合もあるため、事前に実習先へ確認しておくと安心です。
実習中に大切にしたい心構えとマナー
実習期間は、単に「作業を体験する時間」ではありません。
医療人としての姿勢が問われる場であり、患者さまの情報に触れる立場としての自覚が求められます。
実習で意識したいことは次のとおりです。
- 個人情報・守秘義務を徹底する
- 受け身ではなく、自分から学ぶ姿勢をもつ
- 毎日、達成できる小さな目標を設定する
また、現場では多くの先輩薬剤師と出会うことができます。
将来の進路や働き方を考える上でも、積極的に話を聞いて視野を広げてみましょう。
実習の際の持ち物や服装については、下記コラムでもご紹介していますので、あわせてご覧ください。
薬局実習・病院実習の持ち物や服装は?実習時間や心構えも併せて解説!
実務実習でたくさん学んで理想の薬剤師を目指そう!
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実務実習が長期化したことで、薬学生はより多くの現場を見て、より多くの患者さまと関わる体験ができるようになりました。
薬局実習では国が求める地域包括ケアシステムの中で、かかりつけ薬剤師など、地域において活躍する薬剤師を間近で体感できます。
また、病院実習では最先端の医療に触れながら薬のプロフェッショナルとして、チーム医療に貢献する病院薬剤師と一緒に働けるのです。
憧れの先輩薬剤師と一緒に働きながら、自分の将来の姿を具体的に思い描くことができるでしょう。
自分がどんな薬剤師になりたいか、どんな働き方が良いかなど、就職活動の軸も見えてくるはずですよ!
もちろん社会人としての一般常識やマナー、立ち居振る舞いも学べる絶好の機会です。
そうはいっても、新しい環境に飛び込むのは非常に勇気がいりますよね。
現場の人間関係や自分の知識不足に悩むという声もたくさん聞きます。
みなさんに何より大切にしてほしいのは「積極的にコミュニケーションをとること」です。
指導薬剤師の先輩も、実務実習を乗り越えてきた方で、みなさんの緊張する気持ちもよく知っているはずです。
落ち込んで悩んでしまうよりも、まずは積極的に自分からコミュニケーションを取り、わからないことはどんどん質問してみましょう。
実務実習でしか経験できないことはたくさんありますし、その貴重な体験は必ずみなさんの糧になりますよ。
体調管理には気を付けて頑張ってくださいね。
なの花薬局では、薬剤師を目指すみなさんを応援します!
就職サポートコラムでは、薬学生の就活に役立つ情報をたくさん発信中ですので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
また、なの花薬局では、実習期間中でもご参加いただけるオンラインインターンシップを多数ご用意しています。
貴重な実習の合間を有効活用し、就職活動の準備に役立ててくださいね。










